はむざメモ

サラリーマンの雑記ブログ

ラリラリでアッパラパー(誉め言葉)な娯楽スパイ映画   『キングスマン:ゴールデン・サークル』を見て

前作『キングスマン』は、スパイ映画大豊作の2015年にあっても目立って面白く、時事ネタとエンターテイメントを新感覚のノリと舞台仕立てでバランスさせた傑作でした。(因みに他のスパイ映画は、『SPY』『007 スペクター』『ミッション・インポッシブル:ローグネイション』『コードネーム U.N.C.L.E』『ブリッジ・オブ・スパイ、日本の『ジョーカー・ゲーム』も参戦と実に大作揃い)

 

キングスマン:ゴールデン・サークル』(2017)はその続編とあって前から待ち遠しく、2017年中に日本公開なるかと期待していたのですが、年が明けて1月5日公開と相成りました。

 

www.foxmovies-jp.com

 

有楽町のTOHOシネマズ日劇で見たのですが、まだ公開して日も経っていなかったためかそれなりに人が入っていました。真ん中とか、席にこだわらなければ予約は不要で入れるくらいでした。

余談ですが、有楽町マリオンのTOHO日劇は2月4日に閉館するんですね…

“日劇”のフィナーレイベント『さよなら日劇ラストショウ』ゲスト登壇イベント&追加作品決定!! || TOHOシネマズ

その代わりにTOHOシネマズ日比谷が3月29日からオープンということでこちらは楽しみですが、日劇がなくなってしまうのは時代の移り変わりを感じ悲しいです。(ところで、日劇がどいた後マリオンの上のフロアは何に使うのだろう?)

 

…さて、話を戻します。あ、観てること前提で書いていますのでネタバレします。まだ見てないーって方は、そうですね、前作を楽しめたし、少しぐらいのエログロならスパイスだ、と思えるなら劇場で観たら良いと思います。

 

● お話としては、主人公エグジーの所属するスパイ組織キングスマンを壊滅させ、殺人ウイルスで世界を脅迫する麻薬組織ゴールデン・サークル(頭領は狂気の中年女ポピー)相手に、エグジーとマーリン、(そして何故か生きていたハリー)が、米国の兄弟組織ステイツマンの協力を得ながらドンパチする、というもの。

f:id:hamza1987:20180123215903j:plain

 

● うーん…ポップで楽しいスパイ映画を目指したのは分かるし、事実楽しんで観ることはできたのですが、どこかほんのちょっとバランスが崩れて悪酔いするような感じがしてしまいました。例えば前作では人の頭ぽぽぽぽーん(不謹慎)なシーンでは花火風にしたり血の色も変えたりしてマイルドな表現にしていたのに対して、本作はウイルスの最終段階で死ぬときには目から血が噴き出たり、人肉バーガー(挽肉の表現は相当デフォルメしていて、マイルドにしようとしている努力の跡はありましたがそもそも発想がグロい)とか食っていて、ちょっと悪ノリかねぇ…という感じでした。下ネタはまあ良い。寧ろもっと入れろ!

 

※話がまたすごく逸れますが、グロ表現をマイルドにする手法で面白かったのは、日本映画『神様の言うとおり』(2014)で、殺人達磨に先生とか生徒が爆殺されていく冒頭のシーン、血の代わりに赤いビー玉を使っていた工夫です(何故か窓とかに飛び散る血はそのまま)。

【グロ注意】

『神さまの言うとおり』映画オリジナル予告編 - YouTube

 

● 前作よりパワーアップ!というレビューもちらほら見ましたが、疾走感は増したものの、スケールはどうでしょうか…ヴァレンタインのせいでお互いに殺しあった/殺しあいかけた世界中の人々、逆にヴァレンタインの試みを阻止したキングスマンのせいで(笑)頭ぽーんされた人:国連、オバマっぽい黒人大統領の後ろ姿含む米政府、英王室(勧誘ノートの記名のみ、女王を思わせるような直接的描写はなし)等々と、世界の偉い人(≒悪い奴というのが英国流ブラックジョーク)、と考えてみると、麻薬常習者を人質に取った本作より前作の方が規模大きいですよね。

あと、死ななくていいキャラクターを敵も味方も無駄に死なせすぎでしょうよ…。前作で主役と思っていたハリーがあっさり死んだ展開はびっくりしたし良かったと思うのですが、本作はいささか軽過ぎる気も。ランスロットとかマーリンとか… ウイスキーだって信念が違うだけで、逮捕でよくない?と。

スティーブン・セガールを出オチ一瞬で死なせた『エグゼクティブ・デシジョン』(1996)のような演出上の狙いも、最後主演級のキャラクターが片っ端から死んでいくシーンのために50話あるアニメ『機動戦士Zガンダム』のような重さもない。一方で、麻薬を使ってしまった人たちの命云々と言っているので、やはりちょっとラリってる感じが残りました。

 

● 雪山の上の研究施設から(007やん!)、何とか逃げ出す途中にゴンドラで大ピンチ(007やん!)、最後は国旗柄のパラシュート(007やん!)という、重ね技…お笑いで云うところの天丼は007ファンには嬉しい仕掛けでした。雪山でのチェイスは、007でも何度も出ているモチーフですが、一番古い『女王陛下の007』(1969)のスキーチェイスの迫力がなかなか超えられず、シリアス路線のダニエル・クレイグになって『007 スペクター』で漸く超えたかなというぐらい、料理がかなーり難しい素材であると個人的には思っています。本作も、ゴンドラの活かし方が甘く、そんなにぐるぐる高速で回る仕様になってるわけないじゃん、と思って少し醒めてしまいます。

因みに007の雪山チェイスシーンでは毎回新しいアイデアが披瀝されていて、

『007 私を愛したスパイ』(1977)ではスキーストックの仕込銃とユニオンジャックのパラシュート(敵に追われ崖から落ちて絶体絶命!のタイミングでバッと広がる英国旗パラシュートに、てれってれー♪というお馴染みのテーマ曲が重なる演出)、

『007 ユア・アイズ・オンリー』(1981)では敵さんも一緒のエレベーター(一般客がいて手が出せない気まずい空気、結局取り逃がしちゃうというオチ、これは『スペクター』でも同じことやってました)、

『007 リビング・デイライツ』(1987)では走る小屋、スキー板装備のボンドカー、チェロケースの橇(そり)チェイス

『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』(1999)ではパラシュート付きのスノーモービル(パラホーク)部隊による空地混ぜての襲撃、

といった感じ。では、いつゴンドラバトルをやったのかというと、『スペクター』では実はなく(ゴンドラのシーンでは戦ってはいない)、『007 ムーンレイカー』(1979)のボンドvsジョーズになります。今見るとかなり牧歌的ですが、作品自体SFコメディなのでこれはこれでマッチしています。

 

● なんだか007を観たみたいになってしまいましたが、スパイアクション映画はどうしてもこう語るしかないような気がします。勿論シリアスなスパイ映画名作も沢山あって、日本勢も結構良いのですが、この辺はまた別稿でもりもり書きたいと思います。

 

● この下に、他の方の感想・批評なども載せておきます。

どれも非常に参考になりますが、下に行くほどネタバレ度が強いです。一番上段の映画評論の、「新春顔見世興行」という表現は、全くその通りだなと思って笑ってしまいました。そしてやはり多かれ少なかれ(ミッション・インポッシブルではなく)007が言及されていますね。

style.nikkei.com

realsound.jp

forbesjapan.com

maruna0817.com

blog.imalive7799.com

 

日本のスパイ映画という意味では、外事警察 その男に騙されるな』(2012)が近年では良くできていたかなあという印象ですね。

これぞ中華の迸り! アクション超大作映画『戦狼』を見て

最近お仕事で中国に行くことが多いのですが、日に日に街も人も勢いを増していくのを肌で感じます。それでいてインド的な勢い(カオス)ではなく、長江のようにどっしりと、清濁併せ飲みながら着実に成長しており、面白いなあ、と。この辺については別稿で考えてみたいと思っていますが、今日は映画の話です。

 

f:id:hamza1987:20180121165407p:plain

『戦狼』(2017)という映画を見てきました。

映画『戦狼/ウルフ・オブ・ウォー』公式サイト

簡単に言えば中国版ランボーという感じでした。

(終わり)

 

…これでは身も蓋もないのでもうちょっと書きますと、

 

● お話としては、特殊部隊「戦狼」の元隊員レン・フォン(冷锋)が、アフリカの某国で医療援助とか工場経営とかしている中国人同胞を助けるため、反乱軍相手にドンパチする、という筋と思っておけば大体間違っていないです。

 

● このドンパチがまあ凄い。海賊によるシージャック、水中戦、激しい内戦、傭兵軍団による虐殺、反乱軍仲間割れ、ドローン戦、カーチェイス、戦車戦、国連ヘリ攻撃、中国海軍によるミサイル発射と、爆発に次ぐ爆発と肉弾戦のありとあらゆる要素を全部盛せして更にマシマシしたぐらいで、お腹いっぱいだけどテンションは超高いぜヒーハー、となる恐れがあります。あ、でも、ハリウッドでは欠かせないお色気要素はほぼゼロです。ゼロちくび。ちょっと残念。

※ラリったような映画という意味では、インド映画の『バーフバリ 王の凱旋』(2017)を見に行こうかも迷ったのですが(しかもこちらは踊り要素あり!)…、レビューがあまりにもスパイス臭く、胸焼けしそうだったので日和りました。

映画『バーフバリ 王の凱旋』公式サイト

 

● そもそもランボーベトナム戦争の暗部、帰還兵や米国社会の負った傷を描いた作品であるのに対して、こちら『戦狼』は中国政府の全面バックアップによる国威発揚ど真ん中の映画になっています。だから同じランボーでも『怒りのアフガン』に近いし、どちらかというと007ノリですが、そういう分析は置いといて、まずは気楽に壮大なアクションを楽しめば良いと思います。日本人が敵役になっているわけでもないですし。

 

● 中国政府バックアップという点では、人民解放軍90周年「建軍節」に合わせての公開だったということで、なるほど納得。途中中国海軍の軍艦を映すシーンだけやけに画質が粗くなったのは、本物の映像だったからなんでしょうか。しかしこういう映画が作れるというのは、資金調達や国家の協力、映像の技術や俳優陣の層の厚さなど、素直にすごいと思います。

 

● 主演・監督の吴京(ウー・ジン)は、ドニー・イェンと並び今一番熱いアクション俳優@中国で、『SPL/狼よ静かに死ね』(2005)での路地裏バトルで見せた狂気に満ちた敵役は衝撃でした(Youtubeで、SPLとかvs Wu Jingで検索すれば簡単に見つけられます)。本作では主人公補正もあってか、かなりイケメンです。

ジャッキー・チェンとかジェット・リーのようなこてこてのカンフーよりは、現代中国が舞台の近接格闘のような絵(ファイトシーン)が多いイメージのウー・ジン出演作の中でも、本作が間違いなく最高傑作でしょう。

 

● 日本語タイトルだけではよく分からないものの、本作は三部作の二作目であり、前作『ウルフ・オブ・ウォー ネイビー・シールズ傭兵部隊 vs PLA特殊部隊』(2015)の続編になります。が、前作を見ていなくても十分楽しめます。

前作に比べたら本作はまだ公開される劇場も増えていますが、何週間もやっているハリウッド超大作と比べたら回転速く、すぐ見れなくなってしまうようだったので、急いで錦糸町のTOHOで見てきました。東京は映画館多いのでまだ良い方なのでしょうが…

あ、あと、次回三作目への引きもしっかり最後の場面で入っておりました。vs中国国内の麻薬組織(+ネイビー・シールズ崩れの傭兵)、vsアフリカ某国の反乱軍(+欧米ロシア混成の傭兵軍団)ときて、仕上げは中東の過激派と思われます。(ジハーディ―・ジョンっぽいやつが最後出てきました)

盛り込みすぎじゃなかろうか…というのは余計な心配なのかもしれませんが。

 

● 映画の高揚が引くと、こうした、見ていてスカッとするようなアクション映画、日本でもできないものだろうかと考えてしまいます。でも日本人主人公がランボーマクレーン、本作のレン・フォンのように暴れまくってスッキリ、という映画があんまりイメージが湧いてこないのです(僕だけでしょうか?)

多分、そういうのは全部アニメでやってきたということと、日本人を主人公にしてリアリティをもってやろうとすると、どうしても自衛隊員ではなく警察官になってしまうため、ストーリーの風呂敷をそこまで広げられない制約があるのかなあ、と推測しています。あとは、なんというか、頭を空っぽにして楽しめるアクション・エンターテイメント映画をあまり高級と思ってないのかような空気感もあるのかな(違っていたらすみません)。

その意味で『シン・ゴジラ』(2016)はそういう鬱憤の集大成というか、一人のヒーローはいないけど、皆で協力して難題解決するというカタルシスを、大掛りなドンパチを以て描くことができた稀有な映画だったと改めて気づかされます。

(格闘アクションの日本映画としては、『RE:BORN』(2016)がマイナーながら光るものがあります。プロットはもっと何とかならなかったのか…)

 

● この下に、他の方の感想・批評なども載せておきます。

映画の背景的な情報量が多いのは一番下のサイト様です。

 

ameblo.jp

realsound.jp

spice.eplus.jp

 

今年は映画が豊作でうれしい限りです。